プログ・メタル考

ちょっと前にDream Theaterの新譜に収められるカヴァー集の中に収められているRainbowの"Stargazer"についてちょこっと書いた。
[ロック雑感:プログレってナニ?]Dream Theater ”Stargazer” - Food for Thoughts、Candy for Ears



個人的にこのカヴァーはちょっとした事件なんじゃないか、と。
まぁ、ただMike Portnoyが演りたかっただけ、ってのは確かにあるんだろうけど。
その昔、Yahoo!掲示板のプログレシッブロック・カテゴリーの中にプログ・メタルのトピックがあって。
今はもうそのトピックないんだけど、まぁ、今ではYahoo!掲示板自体が下火だしね。
それでも入り口として機能してるんじゃないかなぁ、と思って、未だにThe Flower KingsPorcupine Treeのトピックは継続はさせているんですけどね。。。
ま、独り言に近いのを書いていたりしてます。。。
興味のある方は是非、コメントでも投下して下さい。宜しくお願いします。



それはさておき…
そこで書いたのを思い出したんだけど、私、プログ・メタルの始祖ってRainbowじゃないか、っ書いたことがある。
そして、プログレッシブ・メタルというジャンル名にはちょっとだけ違和感を持つ、とも。
勿論、好きなグループも多いんだけど、何が、って、リダンダント、っていうか。重複している気がする。
つまり、「馬から落馬」みたいな。
私自身、所謂プログレッシブ・メタルと呼ばれるジャンルにいるバンドでよく聴くものはそれなりにあるんだけどね。



プログ・メタル、もしくはプログレッシブ・メタル。
このジャンル名が広く使われるようになったのって…やっぱりDream Theaterからだと思うんですよね。それも2nd。1st時にはまだ、テクニカルなメタル、だったと思う。
この違いも実は大きいんだけどね。プログレッシブ・メタルというのは、やはりプログレシッブ・ロックに影響を受けたメタル、なんだよね。
Dream Theaterの"Train of Thoughs"を聞いたときも、プログレッシブ・メタルっていうのは、ヘヴィー・メタルのサブ・ジャンルであって、決してプログレッシブ・ロックのサブ・ジャンルじゃない、とも思った。



89年。
Dream Theaterの1stが出て、そして、もう一つの出来事がMagna Cartaの誕生。
今でこそ、そのレーベルのリリースに幅が出ているけど、当初はプログレッシブ・ロック復権に力を注いだレーベル、として注目されていた。
その仕掛け人がShrapnelのMike Varney。
Shrapnelは、80年代、テクニカルなギタリストをこれでもかと輩出し、その時代に彩を添えたレーベル。
そんなMike Varneyもプログレッシブ・ロックが大好きで、特に当初はキーボード・プレイヤーに焦点を当てたレーベルを目論んでいた、みたいな記事を読んだ記憶がある。
ま、粒が揃わなかったのか、そこまでの人たちはShrapnelに比べるとMagna Cartaからはそれほど出なかったけど。
このMagna Carta、そしてShrapnelの下地を作ったのは言うまでも無く、ジャズ・フュージョン・シーン。
アメリカのプログレッシブ・ロック・ファンと話すと、こういったテクニカルなジャズ・フュージョンが好きな方が多い。
例えば、Allan HoldsworthJohn McLaughlinPaco De Lucia、Al DiMeolaと言った人たちから、Acoustic AlchemyやShadowfaxの名前が出てくる。
キーボードだとChick CoreaJan Hammerとかになるのだろうか?George Duke
所謂、超絶技巧みたいなのが好き。



そういうのって、メタル・シーンの中にも「最初」から組み込まれていた。
それはヘヴィーメタルがシーンに出てきてから、その音楽性が持つ構築美などに必要不可欠な要素でもあったから。
その筆頭は紛れも泣くNWOBHMであり、その顔役と言えば、やはりIron Maidenに他ならない。
そのIron MaidenのSteve HarrisがGenesisマニアとかBruce DickinsonがGryphon好き、とかそういう話以外にも、徐々にその音楽性にもプログレシッブ・ロック的なものを見せてきた。
個人的には"Hallowed be Thy Name"とかプログレシッブ・ロック好きにも合うんじゃない?と思う。
そして、"Powerslave"で大台を超える13分にも及ぶ"Rime of the Ancient Mariner"が出てくる。
こういった動きは反動でもあった。
パンク・ロックの台頭によって大仰なアリーナ・ロック・バンド(ハードロックのみならず、プログレッシブ・ロックも)が「くそくらえ」で見事に一蹴されてしまったから。
とはいえ、そのパンク・ロックだって、それでは簡単に行き詰ってしまうので、その広がりは他の多くのジャンルと変わらず、ドンドン広がり他ジャンルとの融合を果たしていく。
その中にはプログレシッブ・ロックもあれば、ハードロックもあったりもする。勿論、逆も然り。いや、逆の方が目立ったかもね。
プログレッシブ・ロックなどによって敷居が高くなってしまったロック・ミュージックが、「ギターの弾き方知らないけど、格好良いから、兎に角やりたい」というロック的なものになっていった功績は確かにある。



つまり、ヘヴィーメタルというジャンルの中にプログレッシブ・ロック的な要素というのはその登場からして既に色濃く残されていた、という事。
そのヘヴィー・メタルも他ジャンル同様、様々な影響を受けながら、裾野が広がれば音楽性も多様化し、色々なサウンドが出てくる。
だから、90年代において、プログレシッブ・メタルなるジャンル名が出てきたのは、ある意味先祖返りにも似た感覚を持ってしまう。



じゃあ、プログレシッブ・メタルの始祖がIron Maidenになるか、ってなると、これまた違和感がある。
何故なら、Magna Cartaもそうだったんだけど、キーワードはキーボード・プレイヤーの復権だったから。
Dream Theaterがその技巧に注目を得た要因の一つには間違いなくJohn Petrucciのプレイだけでなく、そこに同じくらいの戦闘能力を持ったKevin Mooreのプレイがあったからに他ならない。そう考えるとIron Maidenだとやっぱり「違う」。
で、更に遡って考えると…
やっぱRainbow?
Deep Purpleは違うんだよね。確かにオーケストラとかと一緒にやっていたりしているんだけど、あれってハードロックの前だったような気もする。アートロック?Jon Lordもそこにクラシック的な展開は入れているんだけど、あくまでも味付けだった気がする。基本は初期はサイケだったし、2期からはブルーズ・ロックやハードロックに準じたフォーマットだったと。
そこへ行くとRainbowってフォーマットそのものがクラシック的だったり、とも思えるんだよね。
ある意味、Emerson Lake & Palmerをギター・バンド化させた感じ?更に大仰に歌えるRonnie James Dioなんて妖精みたいな人まで見つけてしまったから、もう世界はフェアリーテール。



だから、今回のDream Theaterのカヴァー集の選曲にはちょっと頷けるし、楽しみでもある。
Iron Maidenもやっぱりよくカヴァーするよね。注目はド・プログレKing Crimsonの"Lark's Tongues in Aspic Part 2"か?
敬愛するDregsの"Odyssey"、Queenのメドレーとか。あ、Zebraもあったか。
このDregsのカヴァーも一つの象徴なんだろうな、と思う。



オヤジの戯れ言と言えばそれまで、ではある。。。うん。