Dream Theater "Metropolis Part2 Scenes from a Memory" Revisited





インターネットでMetropolis Part2って検索すると日本語のものだけでも膨大なものがヒットする。
なので、私がここで今更、って感じではあるのです。
まぁ、Dream Theater部屋記念って事でね。
この作品を単体で評価するのは難しい。
傑作、って確かに言われているけど。
確かに良い作品ではあるんですが、この作品には所謂「縛り」がある。
Images and Wordsを先に聴かないとダメ。
いや、ダメじゃないんだけど、聴かないと、その魅力を100%堪能出来ない。
もっと言えば、"Images and Words"から時系列で全ての作品を経験して、Dream Theaterというグループの足跡を辿るようにして、ここに来ないと勿体ない。
副題の「Scenes from a Memory」自体がPt.1の「Somewhere like a scene from a memory」から取られている。
こういう縛りがあると単体として…ちょっと問題あるよねぇ〜。まぁ、それでもここから入っちゃったら、それはそれ、ではあるんだけど。
つまり、「勿体ない」んだよ(今じゃ、世界標準語だ)。
ただ、もう既にこのPt.2も発表年が99年と10年も前の作品であるからして、こっちから聴いた、って人も多いはず。
ならば、それはそれで、しっかりとPt.1が入っている"Images and Words"から"Falling into Infinity"まで堪能して欲しい。
音楽的にPt.1からの引用が多いので、そこはチェックして欲しい。



このストーリーには幾つかの根幹がある。その一つが輪廻転生。
前世の出来事を訴えるため、現実社会において歪が生まれ悩む主人公Nicholas。
そこで訪ねたのが催眠療法士。
退行療法("Regression")を受ける様子が冒頭に出てくる。
元々、退行療法というのは幼年期の受けたショッキングな出来事を封印してしまいトラウマとして残ったものを掘り起こす「年齢退行」が主に使われるものだと思う。
ここではNicholasは更に遡り前世まで、自身を掘り下げていく。
"Regression"の冒頭で出て来る
「safe in the light that surrounds me」という行は
"Images and Words"の"Surrounded"の最後に出て来る「Tonight I'll still be lying here surrounded in all the light」辺りとの繋がりを思わせる。
そして、もう一つは"Regression"の最後に出て来る
「Hello Victoria so glad to see you my friend」と。
既にNicholasはVictoriaという女性の名前を知っている、という事。
それだけ明確な夢を見続けて来たか?(それがどれだけ強烈なものであるかは想像に難くない)
退行療法が既に数回に渡っていたか?



"Overture 1928"の一発目のキーボード音で"Metropolis"の続編がここに始まる事を一瞬にして理解出来る。
問題は、1928年という年だろう。
何故、Dream Theaterは約70年前の1928年をNicholasの前世の舞台設定に選んだのか?50年前だと近過ぎた?100年、200年前は?
ジャケットにも1928年1月28日の新聞の1面に殺人事件の様子を伝える記事がある。
(中の記事は確か"Beyond This Life"の歌詞が書かれている)
では、1928年というのはどういった年だったのだろう?
その前にタイトル"Metropolis"で思い出させるのが、フリッツ・ラング監督によるサイレント映画メトロポリス」。

これが1927年作。


さて、アメリカ。1928年というと禁酒法のまっただ中。
禁酒法は元々女性からの要請による法。男が酒場に入り浸り生活を破綻させる、としてアルコールに対する批判が強かった。
因にブートレッグという言葉はこの時代に産まれたもの。禁酒法が施行されている間、密造酒をブーツに隠して運搬していたのが由来。
禁酒法により犯罪を抑制するつもりが逆にギャングやマフィアの台頭を生んでしまう。これは1933年、ルーズベルトが大統領に就任するまで続いた。
そして翌年、1929年、アメリカは大恐慌に突入する。
この年にはアムステルダム・オリンピックも行なわれている。
日本からも人見絹枝が陸上で参加。この回から陸上競技における女性参加が認められた大会として記憶されている。
ここでも女性の社会進出を印象づける。



Dream Theaterが用意した設定でもう一つ気になるのがThe MiracleことEdward Baynes。キャラクターセッティングの所でSenatorとある。つまり代議士。政治家。何故、弁護士や医者ではダメだったのか?建築家は?普通の会社員?
1927年、時の大統領第30代大統領クーリッジは次の大統領選に出馬しない、と表明。民主党候補が禁酒法の廃止などを公約にあげていたことから圧倒的な強さで1928年の大統領選は共和党候補のフーヴァーが勝利する。



Pt.1を振り返ってみると、「Arrived early May」と5月とある。
とすると、1927年5月から1928年の1月の終わりまでの半年間の出来事を振り返っていることになるかもしれない。
こういう時代設定を取り敢えず頭に入れておいておこうまず、役に立たないけどね!



前半を占めるAct1ではNicholasとVictoriaとのやり取りが主となる。
何故、VictoriaがNicholasを呼び続けるのか?
そのヒントの一つが
「I'm not the one the Sleeper thought he knew」(私はThe Sleeperが思っていたような女ではない)というライン。
そして、Nicholasは退行療法でのヒントを元に現実社会でも色々と探っていく("Fatal Tragedy")。
そして事件の概要が"Beyond This Life"で判ってくる。
VictoriaがJulian(The Sleeper)に対して「I can't love a wayward man」と言う場面がある。
そして、「She may have found a reason to forgive if he had only tried to change」と。
もしもJulianが更生するなら、許すのに十分な理由となる、と。
何からの更生だろうか?時代からして、アルコール問題があったのかもしれない。
特に女性からは忌み嫌われていたものでもある。
そして、
「Had a violent struggle taken place?」(ここで争いがあったのだろうか?)と報じているのに対して、
Pt.1では、「It can only take place when the struggle between our children has ended」(私たちの子の間の争いが終わった時のみに起こる)と応えているように取れる。
このラインの前にPt.1で「She's taken you to your HOME」とあるのも重要。
"Home"という曲名は正にここから取られたのだろう。



そしてAct2に突入。
歌詞的には最重要曲の"Home"。
この"Home"が最もPt.1と繋がりが深く、The SleeperとThe MiracleがPt.2で初めて出て来て、その心情を吐露していく様が描かれている。
Julianの問題の一つがここで浮き彫りになる。
「Shine - lake of fire」はPt.1の「You'll find yourself swimming in the lake of fire」と同じものを指しているのだろう。
「Lines take me higher
このLinesというのはコカイン。
映画とかでコカインをクレジットカードなどで線を作って鼻から吸引するのを見た事があると思うが、Linesとはテーブルの上に整えられたコカインの事。
そういうドラッグ渦に嵌った状態を「火の湖(で泳ぐ)」という表現になったのだろう。
「The city's cold blood calls me home」はPt.1の「The city's cold blood teaches us to survive」とMetropolisをthe city's cold bloodと同じように称している。
The Miracleのパートでは「I remeber I was told there's a new love that's born for each one that has died」とPt.1と全く同じ歌詞が出てくる。
The Sleeper、The Miracle、そしてNicholasにとってVictoriaはHomeである、ということ。
このHomeは拠り所とか、そんな感じだろうか。



そして、インスト曲"The Dance of Eternity"。
中間部のJordan Rudessのラグタイムなソロも年代的に近いといえば、近い。ラグタイムが流行ったのは10年代後半みたいだけど。
Pt.1では「Death is the first dance, eternal」、そして「Love is the Dance of Eternity」と締め括っている。
このPt.1に登場する人物は2人ではなく、3人。
Pt.2ではThe Miracle=Edward、The Sleeper=Julianとあるが、Victoriaにはない。ないのか、もしくは伏せたか。もしかしたら、違うのか?
Pt.1で「The third arrives...」とあり、
「Now the Miracle and the Sleeper know that the third is love」と。
であれば…Victoria=Loveとなる。


"One Last Time"で初めて、Nicholasは幼少の頃から夢に悩まされていたのが判る。
「As my childhood dreams slowly come true 」
ここで、VictoriaはNicholas自身の前世というのを理解する。
そして、"The Spirit Carries On"でVictoriaの願いは「私の事を覚えておいて」という、ただその願いであった、という事。
"Finally Free"での顛末はご存知の通り。最後の最後に何が起こったのかを知りたい方は"Metropolis 2000"(ライブDVD)で確認出来る。


で、Julianは?眠ったままだから、The Sleeper?じゃぁ、何故眠ったままなのだろう?


aLl YOu neeD To DO is
opEN yOuR eYES