Jethro Tull "Thick as a Brick" ('72) 再訪

Jethro Tullの名盤の誉れ高い"Thick as a Brick"。

そのコンセプトは語られる事はあっても、意外とジャケットの記事に言及しているのが少ない。
邦題が「ジェラルドの汚れなき世界」と。主人公は8歳のGerald(Little Milton)Bostockの名前から取られたのは明白。
まず、この子のニックネームなんだけど…Little Miltonってブルーズ・ギタリストだよねぇ。。。

ファミリー・ネームのBostockはチェシャー州にある地名でもある。ファミリー・ネームとしても多いみたいですね。このGerald君が書いた詩にIan Andersonが曲を書いて、云々というコンセプトだけど、全部Ian Andersonの創作だよぉ、という所までは有名な話ではないかと思う。


さて、それでは、新聞を象った"Thick as a Brick"の1面(?)記事。
まず目につくのが写真。これは授賞式の写真。
The Society for Literary Advancement and Gestation(SLAG)から授与されたもの。
で、SLAGって残りカスとかそんな意味で、"slag off"というと「ボロクソに言う」という意味になる。
こういう所もギャグが散りばめているのは英国人気質だろう。ディティールは大切ってことだ。トーマス(機関車ね)しかり、ハリポタしかり。
写真に写っているのが左からプレゼンターのLord Clive "Polly" Parritt。このPollyって女性の名前ですよね。。。Mollyとか。あと、Parrot(オウム)のこともPollyって言うらしいんで…って言われたら…確かにオウム顔かも!ParrittってParrotか!?
このプレゼンターの後ろに半分隠れちゃっているのがGerldのお父さん(Davidさん)、そしてお母さん(Daphneさん。何とギリシャ神話でアポロンの求愛から逃げて月桂樹になったダプネーと同名)。その後ろの妖しいおばさんがプレゼンターの奥さん(何を持っているんでしょうね?)に、わざとカメラにパンツを見せているJulia Fealey(14歳、Gerald君のガールフレンド)。因に、このJuliaちゃん、妊娠しており、お腹の子の父親はGerarldと報じられており、お医者さんは「明らかに本当のお父さんを匿っているとしか思えませんね」とコメントしている。SLAGのgestationは「妊娠期間」という意味なんで…。これは別記事の「Little Milton in School-Girl Pregnancy Row」という記事で報じられている。


さて、ヘッドライン"Thick as a Brick"の下に
「JUDGES DISQUALIFY "LITTLE MILTON" IN LAST MINUTE RUMPUS」とある。
「最後の大騒ぎの中、審判はLittle Miltonを失格とした」という記事。
どういう事かというと、Little MiltonはSLAGの授賞式後BBCテレビで"Thick as a Brick"の朗読をしたんだけど、そこで事件が起こる。その事件によってLittle Miltonは小児用心療内科の分野でトップの4人の医師の助言で「すぐにでも治療が必要だ!」と言われる。また医師によると「少年の状態はとてもアンバランスでこの詩は人生や神、国に対する非常に不健康な想いから来たもの」と断じる(何か「時計仕掛けのオレンジ」っぽくない?)。
その為、SLAGからの賞は12歳のMary Whiteyardの"He died to save the little Children"になった、と報じている。
記事は更に事件の概要を詳しく書いている。
鍵は「G○○R」
例えば「F○○K」という表記は見た事があると思う。
BBC番組で朗読を終えたLittle Miltonはインタビューを受けるんだけど、そこでこの「G○○R」という4文字言葉を発する。番組プロデューサーのMichael Fenwickは「最近ではそれこそ大人からならこういう言葉をテレビで聞くことはあるかもしれないけど、8歳の子から聞く事になるとは思いもしなかった。非常に残念だ」とコメントしている。そして「私が彼と同じ年の時はG○○Rの意味さえ知らなかったよ!」と続けている。
で、問題の「G○○R」なんだけど…何でしょうね???多分、造語だと思います。
もしも「G○○R」という単語をご存知のかた一報下さい!


MAJOR BEAT GROUP RECORDS GERALD'S POEMという記事がある。
ここで"Thick as a Brick"を幻の詩にさせてはいけない!と立ち上がったのが片足立ちのフルーティストIan Anderson。Little Miltonの詩に45分の音楽を付けて発売する旨を発表する。ここでもLittle Miltonの地元のレコード屋さんのオヤジが200枚、もしかしたら300枚は行くかもね!という期待を寄せる一方その奥さんが来月出産予定です、と要らない情報が入っていたり。何かと出産ネタとかが多い。
ということで出来上がったのがJethro Tullの"Thick as a Brick"。




後日談として、"Thick as a Brick"の売上は全てBostock Foundationへと寄付される。この基金(Foundation)は10歳以下の子達が文学に接するために設立されたもの、という設定。
そして、更に本作を発表したChrysalisがLittle Miltonのところへ訪ねて、作家として契約。スポークン・ワード・シリーズに起用したい考えを表明。



やっぱり芸が細かいです。その他の記事も面白いんですけどね。。。


Theme's ParkのJethro Tullの小部屋は
Jethro Toe
まだMartin Barreの小部屋しかありませんが、関連がこちら
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