The Sum of No Evil顛末記





さて、話題の"The Sum of No Evil"です。
いや、今回は真面目に泣きそうになった。
何がって、何も聴こえなくて。
聴こえない、ってのは、聴覚がどうの、って話でなく。
何も訴えかけて来ない、とでも言えば良いのでしょうか。
もう、私とThe Flower Kingsとの蜜月は終わり?とまで思いました。


レビューとかでも、例えばDPRPでも10点満点を取って驚きました。そんなに評価が高いのか???みたいな。
でも、このレビューワー、以前にRoineにインタした人と一緒だったので、ある意味、納得出来たけど。
それでも、海外のファンの声とか聞くと、何か盛り上がっていたし…。
他にも、「すぐに気に入りました!」みたいなコメントを読んで、置いてけぼりを食らった気分でした。


一生懸命、聴いてはいたんですが…もうさっぱり。
で、少し置いておいて、同時期に届いたKaipaの新作とかRitualの新譜とかTunerの新作とかを聴いて、気分を紛らわしておりました。
そして、丁度弟から頂いた、iPodが我が家に来たので(へっへっへ、これで私もMP3プレイヤー持ちで、ウォーキングの最中に聴いても音飛びしないぜ)、早速、"The Sum of No Evil"を入れてみる。




驚くなかれ。全てはDisc2を聴いた時に全ての問題が氷解した。
そら、Disc1がチンプンカンプンだったら、普通、Disc2には行かないだろ?!
CDウォークマンには1枚しかCDが入らないんだから!!!



まず、何が問題だったか、というと、歌詞だった。
今作では歌詞が全然聴こえなかった。私には。
何を歌っているのか、さっぱり。
私の場合、歌詞が一行でも一言でも耳に飛び込んでくると(この段階では歌詞カードは読みません)、そこから一気にアルバムの世界観が構築される。
Theme's Parkでも書いたけど、例えば、"Paradox Hotel"はそういう意味ではコンセプトがはっきりしていたのと、歌詞が秀逸だったので、すぐに世界観が自分の中で構築されて、私的名盤となった。
だから、まず、一所懸命に歌詞を聞き取ろうとしたのが、そもそもの間違い。
そして、Disc2を聴いて、特に"The River"の最後で、"The Love is the Only Answer"のメロディーの反復が出てくるでしょ?これを聴いて、あぁ、いつものThe Flower Kingsの世界だ、って思えた。
今作は、メロディーの反復が少ないような気がしていたんだよね。
The Flower Kingsのアルバムって確かに長尺な曲が多いし、リスナーが置いてけぼりを食らいそうになる曲が多いかもしれないけど、アルバム全体を通して聴くと、結構、メロディーの反復が多い。それは、そのアルバムでのRoineが好きなメロディーであって、アルバムを聞く際の一つの聴き所となる。それを軸にして聴くと、あぁ、ここが聞かせたかったのね、というのが聴こえても来る。
そして、もう一つは、"The River"ではヴォーカルがはっきりとナチュラルで聴こえる。方やDisc1はエフェクトがバンバンかかっていて、ハーモニーも多用している。ヴォーカルメロディーは、悪く言えば、バックのサウンドに埋没状態。だから、聴こえるわけがない。
そして、続く"Rigal Diver"のデモでは、Roine Stoltのブルージーなギターが…。
あぁ…。そうか、そうだったんだ…。
そう言えば、思えば、"Unfold the Future"か"Adam & Eve"ぐらいから原点回帰を叫んでいたっけ!?
Disc2にいつものThe Flower Kingsの音を見つけてみれば、なるほど。
Disc1の性質が良く判った。




ずばり、"The Sum of No Evil"は
引き算アルバム
The Flower Kingsは"Stardust We Are"から貪欲にその音楽性を拡散させて来た。
それは、メンバー交代によるものもあっただろうし、単に「楽しそうだから」みたいなノリもあったと思う。
それ故、焦点が定まらない、みたいな言われ方もした。
私はどっちかというと「松花堂弁当」みたいなアルバムが好きなので、大歓迎だったのだが。
その拡散されてきた音楽性をこの"The Sum of No Evil"でグッとシンフォニックの名の下に纏め上げた、という事だろう。

  • 突出したヴォーカル・プレゼンテーションを持たせない
  • ブルージーなギターソロ無し
  • 即興も極力押さえる

ここまで焦点が本当に合ったアルバムはThe Flower Kingsとしては、非常に珍しいだろうね。
禁欲的、と言っても良い。
だって、脱線大好きな人だもの。Roine。
そうやって聴けば、"The Sum of No Evil"のDisc1も怖くない。
これもTheme's Parkで書いたけど、まるで
上質なペルシャ絨毯のよう。
ヴォーカルから、何から何まで。シンフォニックというキーワードで縫い上げられたアルバム。
織物とか、そんなイメージが出来上がった。
サウンド先行のアルバム。



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これからは、欧州ツアー。バンドは現在、P@と合流してリハ中。
頼みますぜ、社長。